研究概要 |
C型肝炎ウイルス(HCV)感染による慢性肝炎、肝硬変、そして肝癌発症にはHCVの慢性持続感染が主要な原因であることが考えられる。そこでHCVの持続感染成立に深く関係すると考えられるHCVコアタンパク質(コア)による転写因子NF-κB活性化機構を明らかにすることを本研究の主たる目的とした。コアがどのようなメカニズムでNF-κBを活性化するのかについて、コアと相互作用する細胞性因子の同定ならびにその細胞性因子とNF-κB活性化との関連を明らかにすることを目的とした。これまでに欠失変異体の解析からコアのアミノ末端側80残基がNF-κB活性化領域であることを明らかにしているため、まずこの領域に結合する細胞性因子の同定を目的として酵母Two Hybrid法によるクローニングをおこなった。LexAを融合させたcore(1-80)をbaitとして、human liver, leukemia, lymphocyte,そしてprostate cDNA libraryを用いてyeast two hybrid screeningをおこなった結果、最終的に17の独立した候補遺伝子cDNAを得た。これらの候補cDNAにコードされるタンパク質とGSTの融合タンパク質を大腸菌で発現、精製して、これらとin vitro転写翻訳系を用いて発現させたコアとの相互作用を検討した結果、最終的に11クローンがコアと相互作用する分子の候補として得られた。現在その候補分子の全長cDNAのクローニングならびにNF-κB活性化との関連の検討をおこなっている。 またこのコアの活性とHCVゲノム複製との関連を調べる目的で組み換え体HCVゲノムが培養細胞内で複製する実験系の構築をはじめた。現在のところHCV構造タンパク質領域を含まないサブゲノムを用いたゲノム複製系が完成しており、今後コア領域を含むゲノム全長を有する複製システムを構築する予定である。
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