研究課題/領域番号 |
13670300
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
上野 貴将 熊本大学, エイズ学研究センター, 助手 (10322314)
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研究分担者 |
滝口 雅文 熊本大学, エイズ学研究センター, 教授 (00183450)
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キーワード | T細胞レセプター / 抗原提示 / HLA / 細胞障害性T細胞 / HIV / 細胞性免疫 / 組換え蛋白質 / 表面プラズモン共鳴 |
研究概要 |
抗原特異的な細胞障害性T細胞(CTL)は、HIV感染細胞の排除に重要な役割を担っている。HIV感染に伴う患者体内でのHLAクラスI分子による抗原提示の質的および量的変化を経時的かつ定量的に解析することは、HIV感染症の病態および発症メカニズムの解明に大きく寄与するものと期待される。本研究では、HIV由来ペプチド抗原に特異的な可溶型のT細胞レセプター(TCR)を用いて、HIV感染細胞上での抗原提示のダイナミクスを解析することを目的とした。本年度の研究で得た成果を以下に記す。 (1)HIV特異的TCR遺伝子のクローニングと再構成。 HIV-1 Pol由来のペプチドを特異的に認識するCTLクローンから、TCRのαおよびβ鎖をコードする遺伝子をクローニングした。可変領域の異なる2種類のα鎖が得られたため、どちらが抗原特異性に関わるかを調べた。マウス細胞でのTCR再構成系を確立後、その機能を評価したところ、Vα12およびVβ5.6を持つTCRがPol由来ペプチドの認識を担っていることが明らかとなった。 (2)可溶型TCR発現系の構築とその調製。 Vα12/Vβ5.6 TCRの可溶性ドメインの末端にロイシンジッパードメインを付与した発現系を構築し、それぞれの蛋白質を大腸菌内で大量発現させた。巻き戻し効率とヘテロダイマーの形成効率が非常に悪く調製が困難であったが、大腸菌由来のシャペロニンを使うことによって、飛躍的な改善が得られ、ヘテロダイマーの調製に成功した。 (3)可溶型TCRとペプチドHLA複合体との結合の速度論的解析。 可溶型TCRとペプチドHLA複合体との結合を表面プラズモン共鳴を用いて解析した。上記の方法で取得した可溶型TCRをアナライトとして、ペプチドHLA複合体との結合を測定し、速度論的パラメーターを求めた。その値は、これまでに報告されたTCR/peptide/HLA複合体の結果とほぼ見合うものであった。 本年度は、申請書に記した研究計画をほぼ満足する成果を得ることができた。今後は、可溶型TCRのリガンド結合能をより強くするために、マルチマー化あるいは変位導入による高アフィニティー化を進めて行くつもりである。
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