研究概要 |
1)ニワトリ血球凝集能を欠如したウイルス(Ch-)はニワトリ血球を凝集しないが、ヒト血球を凝集する。そこで、両血球上のシアリル糖鎖の構造を解析するため、まず両血球上の糖タンパク質を酸素により遊離後、さらに糖鎖を切り出しHPLCを用いてアミノカラムによりシアリル糖鎖を分画した。その結果、両血球にはともにmono-sialyl, di-sialylの分画でピークが見られた。このうち、di-sialyl分画の溶出時間には両血球で違いが見られた。この違いがCh-ウイルスにより認識されるレセプターの違いであるのかを明らかにするためこの分画をODSカラムにより解析している。 2)一方、MDCK細胞上のレセプターに対するCh-ウイルスの結合能を検討した。その結果、Ch-ウイルスは、従来のH3N2ヒトインフルエンザウイルス(Ch+)にくらべ、細胞上のレセプターに対する結合能が低下していた。一般的にヒトインフルエンザウイルスはSAα2,6Galを認識することが知られている。そこで、MDCK細胞上のSAα2,6Gal量をHPLCにより分析した。その結果、MDCK細胞上のSAα2,6Galの量は全シアル酸量の約50%を占めていた。従ってCh+ウイルスはこの細胞上のSAα2,6Galを認識していると考えられるが、Ch-ウイルスは認識できない。そこで、細胞上のシアル酸を除いた後、人工的にシアル酸を導入した細胞を作成して、Ch-ウイルスの結合能を検討した。その結果、Ch-ウイルスの結合能が著しく回復した。従って、Ch-ウイルスがレセプターとして認識している糖鎖構造は、従来のCh+ウイルスのそれとは明らかに異なり、少なくとも用いたシアル酸転位酵素の特異性から判断するとSAα2,6Galβ1,4GlcNAc構造を含む特定の糖鎖構造である可能性が強まった。
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