われわれは、インテグリンシステムを介して、細胞融合の制御を行うタンパク質(fusion regulatory protein : FRP)を見つけ、このタンパク質がパラミクソウイルスの一つである、NDV(Newcastle disease virus)による細胞融合を亢進させることを見い出した。またFRPは4F2/CD98として知られる分子と同じものであることが判明した。またインテグリンはいくつかのウイルスの受容体であることが知られている。そこで本研究では、CD98がパラミクソウイルスの受容体である可能性を探るため、またCD98の免疫担当細胞での役割の解析を行うことを目的として、本年度は以下の研究を行った。 1.今まで遺伝子解析が行われていなかった、パラインフルエンザウイルス4A型のLタンパク質の翻訳領域の遺伝子解析を終了した。 2.マウスのCD98heavy chain(HC)に対するモノクローナル抗体19種の、concanvalin A(ComA)刺激リンパ球の増殖への作用を解析し、その結果、19種の抗体のうち2種がリンパ球の増殖(DNA合成)を抑制することを見つけた。また抑制効果が高いほうの抗体について、ConA刺激リンパ球でのCD98HCの発現に対する作用を検討したところ、この抗体がCD98HCの発現を抑制する事が判明した。これらのことから、CD98は免疫担当細胞の増殖に深く関わると考えられた。予期に反して、カルシウムイオン流入を抑えるベラパミル、微小管に作用するコルヒチン、アクチン繊維に作用するサイトカラシンD、細胞周期をGlで止めるハイドロキシウレアはDNA合成は抑制するが、CD98HCの発現は抑制しなかった。 3.ヒトCD98HCを発現しているtransgenicマウスを作製した。現在掛け合わせが進行中でCD98HCの遺伝子をホモに持つマウスが出来上がりつつあるところである。
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