研究概要 |
我々は既に、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の主構造蛋白であるGag蛋白を発現させた酵母からのウイルス様Gag粒子出芽系を確立した。本研究では酵母変異株を用いて、このVLP産生系を改良するとともに、HIV粒子形成出芽に関与する宿主因子を解析した。 1)粒子表面にEnv蛋白(エンベロープ蛋白)を有する粒子の産生 高等真核細胞ではGag蛋白とEnv蛋白(gp120+gp41)の共発現で、表面にEnv蛋白をもつGag粒子が産生される。酵母でも同様のことが可能か、野生型の酵母(マンノースを過剰に付加する)、マンノースの付加程度をおさえたmnn9欠損株、高等真核細胞と同程度の付加しかおこらないoch1,mnn1,mnn4欠損株を用いて調べたところ、いずれの細胞から産生される粒子にもEnv蛋白はincorporationして来なかった。 2)Gag蛋白輸送及び粒子出芽に関する宿主因子同定の試み 多くのウイルスで、ウイルス蛋白の輸送や粒子出芽極性に細胞骨格蛋白(特にアクチン)の関与が示唆されているものの、その証明はない。これを検証する目的で、アクチンに点変異をもつ酵母約20株を用いて調べたところ、アクチンの第2ドメインの変異により、Gag蛋白は細胞質内の膜画分にmis-targetingし、VLPの産生量が減少することが判明した。また近年、粒子出芽の責任宿主因子としてエンドソーム輸送経路の蛋白質が注目されている。そこで、Pep12(後期エンドソームのt-SNARE)、Vps23(後期エンドソームの輸送蛋白質TSG101の酵母ホモログ)、Vam3(リソソームのt-SNARE)のそれぞれを欠損させた酵母株を用いて調べたところ、Pep12欠損細胞では粒子産生量の低下が、Vps23欠損細胞では粒子産生量の増加が観察された。Vam3欠損細胞では不変であった。
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