研究概要 |
C型肝炎ウイルス(HCV)の構造タンパク質であるコア蛋白質は自身のゲノムRNAに結合して自身の翻訳を抑制することを示唆する結果を得た。この翻訳抑制に重要なゲノムRNA領域は、5'非翻訳領域(5'UTR)内のstem-loop IIId領域(IIId)、特にこの領域のapical loop内の連続するGGG(ゲノムの5'末端から数えて266-268nt、clone J1)が重要であることが明らかとなった。一方、この翻訳抑制に重要なコア蛋白質領域はコア蛋白質に3カ所存在する正に荷電したアミノ酸残基が集中するクラスター(N末端からc1,c2,c3)のうち少なくとも2個のクラスターが重要であることを示唆する結果を得た。以上の結果を得る根拠となった実験結果を以下に示す。 1.コア蛋白質とHCV5'UTR内の各stem-loopとの結合を調べた結果、stem-loop I、23-41nt、IIIdにコア蛋白質は結合することが明らかとなった。更にIIIdのapical loop内の連続するGGGをCCCに替えるとコア蛋白質との結合が弱くなった。 2.これらの各領域を欠失した5'UTRによる翻訳効率を調べた結果、IIIdが欠失した場合のみ、コア蛋白質による翻訳の抑制効果がなくなった。更にIIId内のapical loop GGGをCCCに替えた5'UTRによる翻訳はコア蛋白質による抑制はなくなった。 3.コア蛋白質めクラスターc1,c2,c3内の正に荷電したアミノ酸残基をアラニンに置換した変異コア蛋白質のみHCV5'UTRによる翻訳抑制がなくなった。 今後の展開:培養細胞で増えるHCVクローンが見出されたことにより簡単な方法でHCVの複製を知ることが可能となった。このクローンを培養細胞に感染させ翻訳されたコア蛋白質によりHCVIRES依存的翻訳抑制、持続感染が起こるかを調べる。
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