研究概要 |
マスト細胞の新規な機能性受容体の同定を目的とした本研究の中で,平成13年度は主に,レトロウイルスベクターを用いたcDNAライブラリー発現系の構築と,その予備的レベルの実践に充てた. cDNAライブラー:マウス骨髄マスト細胞のcDNAライブラリーを2種類作成した. 間接的発現スクリーニング法:両ライブラリーをレトロウイルスにパッケージング後,ラットミエローマ細胞(12Y5)に導入した.間接的発現スクリーニング法の原理に則り,DAP-12分子の膜表面発現を指標に,cDNA感染細胞からフローサイトメトリー装置により陽性細胞の濃縮し,クローン化陽性細胞を得た.計4回のスクリーニングから4陽性クローンを得て核酸配列を決定したが,いずれも有意なcDNAとは判断されなかった. 直接的発現スクリーニング法:上記方法の実践より,元来細胞質内に発現すべきFLAG-DAP-12タンパクが,長いスクリーニング過程で非特異的に細胞膜表面に表出され,その結果,多くの擬陽性を生じるという致命的欠点が分かった.こうした欠点の克服の為,DAP-12に会合する分画を大量のマスト細胞ライゼートより精製してラットに免疫し,FLAG複合体に対する抗血清を作成した.抗血清で上記同様にマスト細胞cDNA感染細胞をスクリーニングした結果,多くの分子が同定されたが,中でも,補体関連因子であるDAF, Crryおよびそのスプライシングバリアントなどの補体活性制御因子,CD43などのシアル酸関連因子が重複して単離された.いずれの分子もDAP-12との会合は示されなかったが,現時点での成果は,マスト細胞における補体の制御システム,また,そのシステムにおけるシアル酸糖鎖の関与といったマスト細胞活性化の制御機構の新たな一面を示唆しており,現在,補体系とシアル酸の機能的関連の着眼点で解析を進めている.
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