レトロウイルスベクターを用いたcDNAライブラリー発現系の構築と、それを利用した改良型発現クローニング法の開発ならびにマスト細胞の新規受容体の同定を目的として本研究を行った。そのうち平成14年度は前年度に作製したcDNAライブラリーを用いてスクリーニングを実践した。 cDNAライブラリー:マウス骨髄マスト細胞のcDNAライブラリーを2種類、レトロウイルスパッケージング用ベクター内に構築した。一方向性、独立クローン数200万以上。 直接的発現スクリーニングの実施:間接的発現スクリーニング法の欠点を鑑み、次の手順で、従来の発現スクリーニングを実施した。免疫沈降により、DAP-12に会合する膜タンパク分画を大量のマスト細胞から精製し、ラットに免疫して抗血清を作成した。抗血清で上記同様にcDNAライブラリー感染細胞をスクリーニングした結果、多くのマスト細胞由来の受容体分子が同定された。中でも補体関連因子であるDAF、Crry、CR1などの補体活性制御因子、CD43などのシアル酸関連因子が重複して同定された。いずれもDAP-12との会合は示されなかった。 本年度の研究では、新規受容体の同定には至らなかった。しかし、成果としては、マスト細胞における補体の制御システム、また、シアル酸糖鎖が関係する制御システムというマスト細胞の活性化制御の新たな着眼点を提示したことを挙げることができる。
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