IRF-2欠損マウスにおけるメモリーT細胞の蓄積機構を明らかにするため、IRF-2欠損マウスよりCD8^+T細胞を単離し、T細胞を欠くIRF-2xRAG-1二重欠損マウスおよびRAG-1欠損マウスに移入した。その結果、移入するT細胞が、IRF-2を欠損していなければ、たとえIRF-2を欠損する環境におかれても、移入直後はメモリー型表現型(CD44^<high>Ly-6C^+)を示すが、その形質を維持できず、長期にわたるメモリー型T細胞の蓄積は見られなかった。また、P14T細胞受容体トランスジーン(P14tg)を発現し、ほとんどすべてのT細胞がLCMVペプチドに向かっているIRF-2欠損マウスを作成した。野生型P14tgマウスにおいては、ほとんどすべてのCD8^+T細胞がナイーブ型であったのに対し、IRF-2欠損P14tgマウスにおいては、多くがメモリー型を示した。以上の結果から、IRF-2欠損マウスにおけるメモリー型T細胞の蓄積について以下の二つの結論が導かれた。(1)T細胞自体のIRF-2の欠損が原因であって、他の細胞におけるIRF-2欠損はこの表現型には寄与していない。(2)感染や、自己抗原との交差反応による抗原刺激は重要な役割を果たしてはいない。(1)の結論は、IRF-2欠損マウスで見られる皮膚炎症が、皮膚細胞でIRF-2が欠損することに依存していることと対照をなし、おそらく皮膚炎症とメモリーT細胞の蓄積は異なる遺伝子の発現異常に原因していると考えられる。実際、皮膚炎症を発症しないIRF-2xインターフェロン-α/β受容体二重欠損マウスでもメモリーT細胞の蓄積が見られていることも、この結論を支持する。
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