本研究では、腫瘍増殖における免疫調節のメカニズムを解析し、2種類の調節性CD4 T細胞の関与を明らかにした。BALB/cマウスにおいて、RL male 1あるいはMeth A腫瘍の接種前に、抗CD25モノクローナル抗体(mAb)を投与するとこれらの腫瘍は拒絶される。しかし、CD4 mAbを投与しても拒絶は起こらない。一方、同じ腫瘍を接種した後6日目にCD4 mAbを投与した場合は、これらの腫瘍は拒絶される。この場合、CD25 mAbの投与は効果がない。これらの結果は、CD4^+CD25^+T細胞は、腫瘍増殖の初期の拒絶反応を抑制していることを示している。一方、CD4^+CD25^-T細胞は、それに引き続く時期で腫瘍拒絶を抑制している。in vitroの研究からCD4^+CD25^+およびCD4^+CD25^-のいずれのT細胞も細胞傷害性T細胞の生成を抑制していることが明らかになった。さらに、発癌過程においても調節性T細胞が関与しているか否かを明らかにするために、メチルコラントレン発癌におけるCD25 mAb投与の効果を検討した。メチルコラントレン接種後、4〜6週目にCD25モノクローナル抗体(mAb)を投与すると、発癌が遅延し生存が延長した。一方、p53遺伝子欠失マウスは腫瘍を好発する。このp53^<-/->マウスを用いて、腫瘍発生における調節性T細胞の関与を検討した。その結果、CD25 mAbの投与で、生存期間が延長した。これらの結果から、CD4^+CD25^+ T細胞は、継代腫瘍の増殖だけでなく、メチルコラントレン発癌およびp53^<-/->マウスの自然発生癌の発生にも関与していることが明らかになった。
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