軟骨魚類は、獲得免疫機構で活躍する主要分子を擁していることが明らかとなっている最も原始的な動物であり、脊椎動物における免疫機構の確立において重要な位置を占めている動物である。本研究で対象とする軟骨魚類MHCクラスI遺伝子は、現在、単離されているMHCクラスI遺伝子の中で最も原始的な生物由来である。1.軟骨魚類MHCクラスI遺伝子の遺伝子構造の解明。解析対象として、既にMHCクラスI遺伝子cDNA塩基配列が判明しており、Trsc-UAAのα2ドメインに2種類のlineageを有し、Trsc-UBA遺伝子をも有する軟骨魚類サメ個体を選択した。その血球DNAより調製したgenomic libraryをスクリーニングし、MHCクラスI遺伝子陽性genomicクローンを単離した。対立遺伝子及び遺伝子座が異なるMHCクラスI遺伝子のクローンを選別し、それらの塩基配列を決定した。得られた軟骨魚類MHCクラスI遺伝子構造と、他の脊椎動物から報告されているMHCクラスI遺伝子構造との比較を行ない、exon/inron構造の保存性について検討した。また、転写開始領域を解析し遺伝子発現調節に重要な5'領域のDNA塩基配列について解析した。MHCクラスI遺伝子では、複数の遺伝子調節配列が存在していることが知られており、これらの有顎脊椎動物における普遍性について検討した。2.MHC関連遺伝子群の解析による多様性の解明。軟骨魚類より単離した複数のMHCクラスI関連遺伝子のcDNA及びgenomcクローンを基に決定された塩基配列を古典的MHCクラスI遺伝子及び他のMHC関連遺伝子と比較検討した。また、これらのMHC関連遺伝子の遺伝子座と古典的MHC遺伝子座との関係を明らかにした。MHC関連遺伝子の数種類と古典的MHC遺伝子とはリンクしない結果が得られた。
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