B細胞の活性化を制御する分子機構を明らかにするために、私たちは休止期B細胞が活性化される際に発現誘導される遺伝子Clast1と、逆に活性化に伴い発現が抑制される遺伝子Clast5のin vivoにおける機能の解析を行った。Clast1分子をB細胞で特異的に発現させたトランスジェニック(Tg)マウスでは、抗原刺激に対するB細胞の反応性が上昇し、T依存性抗体産生が顕著に元進した。僅か一回の免疫で長期にわたり、抗原特異的なIgM抗体の産生が増加し続けた。これらの結果から、Clast1は、CD40からのシグナルによって特異的に誘導され、B細胞の活性化を正に制御する分子と推察された。一方、Clast5-Tgマウスにおいては、脾臓と胸腺の大きさ及び細胞数がコントロールの半分以下に減少した。また、抗IgM抗体やCD40リガンドなどの刺激に対し、B細胞の反応性が低下したことが示された。さらにT依存性抗原に対する抗体産生が障害され、胚中心の表現型をもつB細胞が減少した。従って、Clast5は、抗原レセプターをはじめ、様々な補助刺激分子からのシグナルの核内ターゲットであり、B細胞の活性化を負に制御する転写因子であることが示唆された。現在、ノックアウトマウスを作製中である。
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