研究概要 |
関節リウマチは、関節の炎症と変形を特徴とする病気で強い関節痛をともなう不可逆性で、原因不明の難治性疾患として知られている。関節リウマチ患者数は世界中で3700万人,医療コストなどが年間数兆円になるといわれておりその病態解明が強く望まれている。関節リウマチとMycoplasma fermentansについての臨床報告が1996年からあいついでされた。しかしそれを証明できる原因物質の特定はなされていなかった。 研究代表者らは、これまでに、強い免疫原性をもつM.fermentansに特異的なコリン含有糖リン脂質(GGPL-1およびGGPL-III : GGPLs)を発見し、化学構造を解明した。その構造に基づいて関節リウマチの病態についての仮説を提唱し、さらに、作成したGGPL-III特異モノクローナル抗体(31)を用いて、関節リウマチ患者組織に炎症サイトカイン誘導活性をもつGGPL-III抗原が存在することを示し、GGPLsが関節リウマチの原因物質のひとつであることを証明してきた。このマイコプラズマ由来糖脂質についてはすでに有機化学合成に成功し、より細かくデザインされた構造類似体、精製法や疎水性比較法も準備できており、これらを用いた解析を進めている。 糖脂質抗原は自然免疫から獲得免疫へ至る免疫制御機構において重要な役割をになっていることがわかってきている。したがって、リウマチの関節破壊原因物質であるM.fermentans由来糖脂質の脂質抗原提示機構などの免疫分子機構が解明されれば、それにより得られてくる機能や解析技術は、関節リウマチのみでなく、がん・自己免疫疾患・エイズなどの難治性免疫不全疾患の免疫制御療法の創薬開発にもつながると考えられる。
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