研究概要 |
1.私達はリンパ球ホーミングに着目し、免疫組織染色法および中和抗体による短時間ホーミング実験を用いて肺粘膜免疫組織(BALT)の組織形成機構を検討した。その結果、腸管粘膜免疫組織とは異なり、BALTのHEVにはPNAdと高レベルーVCAM-1の発現が認められた。また、PNAd,VCAM-1,α4 integrin,LFA-1,L-selectinを阻害することにより、BALTへのリンパ球ホーミングが有意に阻害したことがわかった。これらの結果は、PNAd/L-selectin,VCAM-1/α4β1 integrinとLFA-1からなる細胞接着機構がBALTへのリンパ球ホーミングを介在することを示唆している。 2.私達は免疫染色法とLCM-RT-PCR法でを用いてBALTにおけるケモカインSLCとMIP-3bの発現を明らかにした。また、SLCまたはMIP-3bで処理したリンパ球および両ケモカイン同時欠損マウスでは、BALTへのリンパ球ホーミングが有意に阻害された。これらの結果はケモカインSLCとMIP-3bがBALTへのリンパ球ホーミングに深く関わっていることを示唆している。 3.NF-κB遺伝子突然変異による二次リンパ組織欠損マウス(aly/aly)を用い、アレルギーの発症について野生型マウスと比較検討した。その結果、aly/alyマウスでは気管支肺洗浄液には炎症細胞特に好酸球とリンパ球が有意に減少した。また、気管支肺洗浄液のリンパ球サブセットとその細胞接着分子をFACSで解析した結果、aly/alyマウスでは気管支肺洗浄液中のCD4陽性細胞とくにα4β1インテグリン陽性細胞が有意に減少した。またリンパ球の接着分子発現と一致し、肺血管にα4β1インテグリン陽性細胞の遊走に欠かせない血管接着分子VCAM-1の発現がaly/alyマウスで弱かった。さらに、aly/alyマウスは野生型マウスより血清総IgEが有意に減少した。これらの結果、二次リンパ組織の形成に重要なNF-κB遺伝子は炎症細胞の遊走とIgE産生を通じ、アレルギー喘息の発症に寄与することがわかった。 4.CCR7リガンド(SLCとMIP-3β)欠損マウスとその野生型において、アレルゲンOVAを用いて、気管支、粘膜リンパ組織(BALT)の誘導を検討した。自然形成と同様に、抗原の気道内投与は野生型マウスでは気管支の分岐部に典型的なBALTが誘導できたのに対し、欠損マウスでは気管支に沿った拡散型BALTが大いに誘導できた。この結果より、我々はCCR7リガンドがBALTの組織型を決定する上に重要であると考える。
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