1.神経毒性物質の神経活動障害に関する研究 本研究者らが樹立したN18D2細に、膜電位感受性色素DiBAC_4で染色後、被験物質を曝露し蛍光光度計にて測定した。励起側にOMEGA-450BP10フィルターを、吸収側にOMEGA-530BP10フィルターを用いることにより感度、精度が向上し、ベースラインも低いレベルに抑えることができた。自律神経系を刺激、のち麻痺させることが知られているニコチンは、添加量に応じて膜電位活性が高くなった。軸索変性ニューロパチーを引き起こすエタノールやヒ素は、培養液中濃度が高くなるほど膜電位活性が低くなった。有機系神経毒性化合物のジクロロメタン、ジクロロエタン、パラフォルムアルデヒド、ジメチルスルホキシドについても膜電位活性が添加量に応じて抑制された。神経毒性物質の神経膜電位の変化(抑制・亢進)を測定することにより神経毒性物質を検出することができた。 2.神経毒性物質の染色体異常誘発性とアポトーシス誘発性 神経毒性物質をN18D2細胞に曝露後、小核誘発性とアポトーシ誘発性の検討を行った。小核誘発性とアポトーシス誘発を比較すると小核は被験物質曝露後1回以上の細胞周期を経て形成されるが、アポトーシスは数時間後から形成される。また、アポトーシスは小核誘発濃度よりも高濃度であった。今後の課題として上記試験法が遅発性神経毒性試験、一般毒性試験、行動学的、電気生理学的、神経化学的および神経病理学的試験等の結果をどの程度カバーしているかを検証していく必要がある。
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