1)西日本の肺がん死亡率はNO_2や気温と相関し、気温が1℃上昇しNO_2が1ppb上がると人口10万人当たりの年齢標準化肺癌死亡率が男性で1.9人、女性で0.42人増加すると計算された。 2)喫煙中の吸口近くのフィルター内温度は吸いはじめから中程にかけて強く外気温の影響を受けた。吸い終わりのころには46.4℃となり差が縮小した。 3)培養細胞にBPDEを作用させたところ、40℃では、37℃よりもDNA付加体形成量が多かった。また、40℃の時、高濃度(4μg/ml)のBPDEに接触させると付加体量は減少し、高温下では付加体量が一定以上になると細胞が死滅することが示唆された。 4)年間平均気温と肺癌死亡率の異なる4地域を選び、健康成人男性439名の末梢血リンパ球中のBPDE-DNA付加体量を測定して比較検討を行った。各地域毎に、非喫煙者、喫煙者および若年者、高年者について検討した。BPDE-DNA付加体は抗BPDE-DNAモノクローナル抗体5D11を用いて染色し、フローサイトメーターで測定した。リンパ球中にはBPDE-DNA付加体陽性細胞と陰性細胞が存在し、陽性細胞の割合、平均付加体量(陽性細胞の平均付加体量/陰性細胞の平均チャンネル数)、総付加体量(陽性細胞比率x平均付加体量)について検討した。喫煙の有無および年齢差によるBPDE-DNA付加体の違いはみられず、また平均付加体量には地域間差もみられなかった。しかし、陽性細胞の比率および総付加体量は地域間で有意に異なっており(p<0.001)、肺癌死亡率の高い札幌で高く、肺癌死亡率の低い熊本と岡山で低く、肺癌死亡率の高い福岡では低い集団の他に札幌と同様の高い集団もみられた。
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