医薬分業の主要な意義である薬局における処方薬の重複投与・相互作用のチェック機能につき、東京都の全保険薬局を対象とした調査、ならびに一健康保険組合のレセプトの分析により検討した。調査の結果、東京都の保険薬局において、医療保険における重複投与・相互作用防止加算を算定した処方せんの事例は、1か月間で少なくとも1件請求したものがあわせて101例であった。請求回数については1回のみが56例、2回のみが32例、3回以上が11例、不明2例であった。請求件数は全部で169件であり、内訳は重複投与防止が123件、併用注意・併用禁忌防止が32件、不明14件であった。これは対象薬局が応需した処方せん総数の0.0088%に相当する。これにより、保険薬局において薬剤の重複処方等を算定するケースはあまり多くないことが示唆された。重複処方が発見された薬剤は中枢神経系用薬、消化器官用薬、抗生物質の順に多かった。またいわゆる門前薬局と、それ以外の薬局における本加算の算定頻度に、統計的な有意差はみられなかった。薬局関係者からのインタビュー調査を加えたところ、算定が少ない理由として、医療保険の診療報酬における重複投与・相互作用防止加算請求時の制約条件による可能性が示唆された。重複投与・相互作用防止加算は、薬剤数を減らした場合にのみ請求でき、別の薬剤に変更した場合には請求できない。したがって診療報酬上の請求件数だけでは、重複投与・相互作用防止の実態を過小評価する可能性が明らかになった。健康保険組合のレセプト分析では、同時期に複数の医療機関を受診している患者の割合が4割を超えることが明らかになった。今後、レセプト情報を用いた重複投与・相互作用防止のための継続的モニタリング・システムについて検討する必要があると思われた。
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