研究概要 |
大阪市内の化学系会社を対象として、まずパイロット的に56人を対象として、上下肢血圧比(ABI)、容積脈波波(PWV)を測定した。その結果、勤労者集団ではABIの異常者が稀なこと(1名)、PWVは年齢、血圧と強い正の関連を示すため、幅広い年齢層を対象とした場合、他のリスクファクターの影響がマスクされてしまう可能性が示された。そこで同企業の50歳代男性に研究対象を絞り、主にPWVと血中ビタミン(葉酸、ビタミンB12)、C反応性蛋白(CRP、低域定量)との関連を検討することとした。50代男性の対象者は268名おり、このうち社員番号が奇数の117名をABI、PWVの測定対象者とした(平均年齢55.1歳)。血中葉酸平均値は14.2nmol/L、ビタミンB12平均値は382pmol/L、CRP平均値は11.1μmol/Lであった。このうち2名は採血時に明らかな急性感染症(感冒)を有しており、CRPの値が常態ではないと判断されたため分析から除外した。線形重回帰分析を用いて、年齢、飲酒量、肥満指数(BMI)、LDLコレステロール、HDLコレステロール、収縮期血圧値、空腹時血糖、喫煙、CRPとPWV(cm/sec)との関連を検討した。PVWと有意な関連を示したのは、収縮期血圧値(偏回帰係数8.1,95% C.I. 5.3-10.9)、喫煙(101.9,95% C.I. 1.8-201)、CRP(4.4,95% C.I. 0.4-8.5)であった。CRPの代わりに葉酸またはビタミンB12を独立変数として解析を行ったが、これらはPWVと関連を認めなかった。喫煙は血中葉酸濃度と強い負の関連を示したが、ビタミンB12と関連する生活習慣は明らかではなかった。次年度は残りの50歳代男性のPWVを測定すると同時に、葉酸、ビタミンB12によって規定される動脈硬化促進要因である血中ホモシステイン濃度の測定を計画している。
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