小児期の肥満と不定愁訴、自律神経機能との関連を明らかにするため、以下に示す検討を行った。 1)京都府下の肥満頻度:京都府下の児童・生徒の肥満頻度について地域差を検討した結果、明確な地域差が認められた。様々な地域特性と肥満頻度との関連はみられず、保健所の介入効果の可能性が考えられた。 2)運動の好き嫌いと体脂肪率:小学校5・6年生を対象として運動の好き嫌いと体脂肪率との関連について検討した結果、運動の好き嫌いと体脂肪率は関連がみられたが、肥満度とはみられなかった。 3)肥満児の不定愁訴:小学校3〜6年生を対象として、肥満、やせの有無と不定愁訴との関連を検討した。腹痛、食欲不振、頭痛、不眠、だるい、朝起きられないなどの症状は肥満、やせの有無により有意な差はみられず、立ちくらみに関しては、やせに多く、肥満に少なくみられ、有意差がみられた。 4)糖尿病児の自律神経機能:1型糖尿病患児を対象として、心拍変動解析からみた自律神経機能について検討した。調査した12例5例では同年齢の標準値と比較して心拍変動は低下し、そのうち罹病期間の長い2例での低下は著しく、副交感機能を示すHFの低値、交感神経機能を示すLH/HFの高値がみられ、自律神経機能障害の存在が示唆された。 5)肥満児の自覚的運動強度:肥満小児を対象に運動負荷試験を行い、自覚的運動強度と生理的パラメーターとの関連を検討した。肥満児の自覚的運動強度と運動耐容能との関連には一定した傾向はみられなかったが、無酸素性作業閾値での自覚的運動強度の確認は肥満改善のための有効な指標となると考えられた。 6)肥満児の運動療法:過去5年間の運動療法に参加した肥満児を対象として、アンケート調査を行った。肥満度の変化は運動療法参加群で低下するものが多く、不定愁訴も運動療法参加群で少なかった。
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