対象と方法:1996年9月から11月にかけて広島市在住の65歳以上の在宅高齢者にアンケート調査を実施し、729人(男性201人、女性528人)から回答を得た。次いで、この729人について1999年12月まで追跡調査を行い、生命予後に関する追跡情報が得られた。この1996年のアンケート調査は郵送でおこない、質問票としては平成8年度厚生省『老年者のADL阻害要因とQOL(Quality of Life)調査に基づく介護補助対策』事業で作成された24項目からなる自記式のものを使用した。この質問票はADLは家庭内の日常生活動作(基本的ADL)(食事、排泄など)に関する6項目と社会活動に関する13項目(社会的ADL)に分かれており、その他QOLに関する3項目と疾病保有状況の17項目ならびに保健・医療・福祉サービスに関するする3項目からなっている。生命予後についてはがん死亡とがん以外の死亡に分け、性・年齢調整死亡率を求めてADL阻害状況や疾病保有状況から予後予測要因の解析をおこなった。ちなみに、4年間の追跡でがん死亡が27人、がん以外の死亡が51人認められた。 結果:がん死亡に影響を与える要因として有意になったものとして、肝臓病の既往、痴呆の存在、食事や排泄に介助を要すること、請求書の支払いや銀行預金の引き出しが出来ないこと、年金の書類が書けないことなどがあげられた。がん以外の死亡に関しては、着替えに介助を要すること、病人を見舞うことが出来ないこと、生活に満足感が無いこと、があげられた。これら要因には介入可能なものもいくつか含まれ、またADL低下に大きく関与している脳卒中などの予防を積極的におこなうことにより、より健康な高齢社会を実現することが可能と考えられた。
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