研究概要 |
1.1988年の久山町の健診受診者から設定した第3集団2,637名の予後調査を行った。 2001年6月までに571名の死亡を確認し、439名を剖検した(剖検率72.6%)。また、この追跡期間中に脳卒中および心筋梗塞の発症が疑われた者はそれぞれ216名、107名であった。全症例の臨床情報を収集し(剖検例は病理所見も含む)、2002年2月22日現在、死亡例のうち560名の最終死因を決定し、脳卒中203名と心筋梗塞99名について発症の有無および最終的診断名を決定した。また、この期間中に91名の胃癌発症例を把握した。残りの症例について本年度中に検討を終了する。 2.この集団のうち、75g経口糖負荷試験を受けた40-79歳の集団2,424名を8年間追跡した成績より、耐糖能異常と心血管病発症との関係を日本糖尿病学会の新しい診断基準(1999年)における境界型を中心に検討した。 追跡開始時の耐糖能レベルを正常型、境界型、糖尿病型に分け、境界型をさらに負荷後2時間値(2hBS)<140mg/dlで空腹時血糖値(FBS)が110-126mg/dlのimpaired fasting glucose(IFG)、2hBSが140-199mg/dlでFBS<110mg/dlのimpaired glucose tolarance(IGT)1と110-125mg/dlのIGT2の3群に分類した。 脳梗塞(CI)発症率(対千人年)を年齢調整してみると、男女とも糖尿病型の発症率(男性6.3、女性5.8)が正常型(2.1、2.2:両者p<0.05)に比べ有意に高かった。女性ではIFGのCI発症率も有意に高く(8.6:P<0.01)、さらにIGT2群の発症率も糖尿病レベルと同じように高かったが(5.4)、対象者数が少なく有意差は得られなかった。同様に虚血性心疾患(心筋梗塞発症と1時間以内の心臓突然死)の発症率をみると、男女とも発症率は耐糖能の増悪とともに高くなり、女性で正常型と糖尿病型の間で有意差を認めた(男性2.6vs6.9、女性0.9vs3.5:p<0.01)。 以上より、FBS高値は2hBSレベルにかかわらず、女性でCIのリスクになることが示唆された。
|