1、本研究の目的は、糖尿病による中途視覚障害者の点字触読に関する問題点を明らかにし、その指導法の構築を図ることである.今年度は、その特徴を明らかにするために点字触読における触覚閾値、振動覚閾値の経時的変化と触読開始時および終了時の接触力の変化を調べた. 2、研究方法は糖尿病による視覚障害者14名(糖尿病群)とその他の原因による視覚障害者7名(非糖尿病群)に対して以下の実験を行い、両群を比較した. (1)点字触読に使用する示指(触読指)および反対側示指(非触読指)指尖において、触覚閾値と振動覚閾値を測定した.その後点字触読を行い、3分ごとに4回(計12分間)閾値の測定を繰り返した. (2)触読開始時と終了時に、触読指に加えている接触力を測定した. 3、結果は、(1)非糖尿病群では、触読指と非触読指における触読前の触覚閾値、振動覚閾値の平均はそれぞれ6.1gm/sqmm、2.4×10-2Gで、触読後の閾値に明らかな変化は見られなかった.糖尿病群の閾値は9.1gm/sqmm、3.3×10-2Gで、早いものでは、触覚閾値は6分後、振動閾値は3分後に触読指の閾値に変化がみられ、その後時間を追う毎に閾値が上昇した.触読後の閾値は有意な差を示した(P<0.05).反対指の閾値には明らかな変化は見られなかった.(2)点字触読開始時の接触力は3.5〜15.1gfで、糖尿病群、非糖尿病群ともに有意な差はなかったが、触読後、糖尿病群では明らかに接触力が増大した(p<0.05). 4、次年度はさらに接触力と血流の変化について解析し、点字触読を困難にしている要因について明らかにする予定である.
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