研究概要 |
1989年に文部省大規模コホート研究のベースライン調査に回答した長野県佐久地区住民28042人について、1997年3月末までの脳血管疾患、心疾患、がんの罹患状況を観察するとともに、ベースライン時における33品目の食物摂取頻度より、個人の栄養素摂取量を推定し、それらと疾病発生の関連について検討した。 解析対象者は、33品目の食物摂取頻度調査の回答に15以上欠損値のない25,700人(男11,849人、女13,851人)である。観察期間中、急性心筋梗塞134人(男93人、女41人)、脳出血114人(男61人、女53人)、脳梗塞345人(男183人、女162人)、胃がん355人(男248人、女107人)、大腸がん255人(男154人、女101人)、肺がん102人(男75人、女27人)の罹患が観察された。栄養素摂取量は、五訂日本食品標準成分表を用いて33品目の食物摂取頻度より、エネルギー量、蛋白質、脂肪、炭水化物、ビタミン等、1日1人あたりの栄養素量を算出した。疾病罹患との関連には、罹患していないものの各推定栄養素量の四分位により、罹患者を第1-4四分に分類した後、全体をまとめて第1四分位に対する第2〜4分位の、性・年齢調整したハザード比にて検討した。 急性心筋梗塞では、エネルギー、炭水化物の摂取量が多くなるほど、ハザード比は有意に低くかった。ビタミン類では関連は認められなかった。脳出血では、関連のある栄養素は認められなかったが、脳梗塞は、エネルギー、蛋白質、ビタミンB群の摂取量が多くなるほど、ハザード比は有意に低くかった。胃がん、大腸がん、肺がんは、いずれも関連のある栄養素は認められなかった。現在、疾病罹患と他の栄養素との関連を検討しており、さらに、喫煙・飲酒の影響を考慮して解析を進める予定である。
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