研究概要 |
本年度は1989年に文部省大規模コホート研究のべースライン調査に回答した長野県佐久地区住民28042人について、1997年4月1日より1999年12月31日までの脳血管疾患、心疾患、がんの罹患状況について調査した。さらに,前年度と同様、ベースライン時における33品目の食物摂取頻度より、個人の栄養素摂取量を推定し、それらと疾病発生の関連について検討した。推定栄養素摂取量は、五訂日本食品標準成分表を用いて33品目の食物摂取頻度より、エネルギー量、蛋白質、脂肪、炭水化物、ビタミン等、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸の1日1人あたりの栄養素量を算出した。疾病罹患との関連には、罹患していないものの各推定栄養素量の四分位により、罹患者を第1-4四分に分類した後、全体をまとめて第1四分位に対する第2〜4分位の、性・年齢調整したハザード比にて検討した。 観察開始時より1999年12月末までの観察期間中、急性心筋梗塞164人、脳出血134人、脳梗塞458人、くも膜下出血96人、胃がん496人、大腸がん310人、肺がん129人、甲状腺がん69人、肝臓がん59人、胆嚢・胆道がん53人、膵臓がん51人、食道がん47人、乳がん131人の罹患が観察された。 解析対象者は、33品目の食物摂取頻度調査の回答に15以上欠損値のない25,700人(男11,849人、女13,851人)である。急性心筋梗塞では、エネルギー、蛋白質、炭水化物の摂取量が多くなるほど、ハザード比は有意に低値を示した。ビタミン類では関連は認められなかった。脳出血、くも膜下出血では、関連のある栄養素は認められなかったが、脳梗塞は、エネルギー、蛋白質、ビタミンB群の摂取量が多くなるほど、ハザード比は有意に低値を示した。胃がん、肺がん、甲状腺がん、肝臓がん、胆嚢・胆道がん、膵臓がん、食道がんは、いずれも関連のある栄養素は認められなかった。大腸がん、乳がんは脂肪、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸の摂取量が多くなるほど、ハザード比は高くなる傾向を示したが有意ではなかった。
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