研究概要 |
研究初年度に本研究への参加に同意したN村の1036名に,2年後の研究への参加を募った.本研究に同意した766名に対し,留め置き調査にて,疾病状況,生活習慣,生活機能に関する現況を把握し,さらに健康調査により,体格,体脂肪率,血圧,握力,脈拍,血清総コレステロール(TC)およびHDLコレステロール(HDL),血清アルブミン(Alb)を測定した.2年間の生活機能の変化および総死亡と初年度のTC,HDLとの関連を一般線形モデルおよび多重ロジスティックモデルを用いて検討した.TCは性別に4群に群別化し検討した.初年度の研究にてTCと年齢,血圧,BMI,体脂肪率,血清アルブミンなどの既知の総死亡の危険因子との関連が判明したため,これらを調整要因としてモデルに投入した.2年間のTCの変化量に有意に関連していた要因は,性別(男性B=-7.9).年齢(B=-0.26).初年度TC(B=-0.30)であった.生活機能の指標としての老研式活動能力指標は初年度のTCレベルが低い群の低下がやや大きい傾向であったが統計学的有意差はみられなかった.過去8年間でみた総死亡の有意な危険因子は,男性前期高齢者では,脈拍数,低握力,喫煙,女性前期高齢者では,最大血圧,低握力,低Alb,男性後期高齢者では,低Alb,飲酒,喫煙,女性後期高齢者では,年齢,TC低値,抑うつ度,脈拍数,低Albであった.一方,8年間の生活機能の変動より算出した65歳時活動的余命は,男性18年,女性16年であった.8年間の生活機能低下の危険因子は,男性前期高齢者では、低握力,女性前期高齢者では,低握力,睡眠8時間以上,男性後期高齢者では,高次生活機能低下,睡眠6時間未満,女性後期高齢者では,低握力および低TCであった.女性後期高齢者の余命における至適TCは,220mg/dL以上,活動的余命における至適TCは200mg/dL以上であることが示された.
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