研究概要 |
ポリ塩素化ビフェニール(PCB)の生体内濃度を明らかにするため、高分解能GC/MSを用いて、PCB個々のアイソマー、特に毒性の強いコプラナーPCB(Co-PCB)の母乳中濃度の経年変化(1973年から2000年)を測定した。測定に用いた乳脂肪は、1973年以降PCB汚染調査のために冷凍保存していたもので、年齢等のファクターを最小限におさえるため、年齢25〜29才初産婦のみを対象とし、母乳採取年度別に等量混合(3滴〜5滴)(各年度19〜32人)し、1973年から2000年まで(1987年を除く)合計27検体について、分析を行った。測定したCo-PCBは、WHOの毒性等価係数(TEF)の定められたノンオルソ体4種とモノオルソ体8種の計12種である。その結果、PCBの検出のパターンは各年とも類似しており、母乳中のPCB濃度は、70年代をピークに急激に減少していた。また、その減少度は塩素数の少ないPCBほど高く、四塩化の3.3',4,4'-TeCBでは、27年間で1/40にまで減少していた。五塩化、六塩化のモノオルソ体もそれぞれ1/7から1/3に減少していたが、六塩化のノンオルソ体、3,3',4,4',5,5'-HxCBのみ、ほとんど減少していなかった。これらの原因については、汚染源および代謝の両面から現在検討中である。今後、TEF値のない、PCBアイソマーについても検討する。 水酸化PCB(PCB-OH)については、負化学イオン化質量分析装置付きガスクロマトグラフィー(GC/MS-NCI)を用いた高感度分析を目的として、Pentafluorobenzyl Bromideによるフェノール性水酸基の誘導体化について検討を行った。しかしながら、一部導入できないPCBアイソマーがあった。これは構造的な障害によるものと考えられる。従って、今後他の誘導体化あるいは、GC/MS/MSを用いた方法等について検討を行う。 PCBおよびPBDEの基本骨格となるビフェニルおよびビフェニルエーテルのS-9代謝物にエストロジェン様作用を明らかにした。現在、母乳中に含まれるPCBアイソマーのS-9代謝物についてエストロジェン様作用を評価している。
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