この研究の目的は、焼却施設の梁などに堆積している粉塵中のダイオキシン類濃度と労働者の血中ダイオキシン類濃度の関係を明らかにすることにより、堆積粉塵中ダイオキシン類濃度を用いて健康調査(血中ダイオキシン類濃度測定)実施の必要性を判断する手法を確立することである。このため、焼却施設13ヵ所において、職員の血清中ダイオキシン類濃度と堆積粉塵中ダイオキシン類濃度を測定し、曝露指標と血清中濃度の関係を検討した。その結果、以下のことがわかった。 (1)堆積粉塵中ダイオキシン類濃度は0.54〜33ngTEQ/gと一般土壌の1000倍のレベルであり、職員の勤務中のダイオキシン類曝露が懸念された。 (2)焼却施設13ヵ所中10ヵ所で、職員の血清中七塩化ジベンゾフランが一般人よりも有意に高くなっており、堆積粉塵中の同族体パターンから考えて、勤務中の取り込みに起因すると考えられた。また、一部の施設では血清中六塩化ジベンゾフランが一般人よりも有意に高くなっており、やはり勤務中の取り込みに起因すると考えられた。 (3)曝露指標と血清中ダイオキシン類濃度の関係の検討では、1施設(調査の前年に大規模な改造工事を実施)除けば、七塩化ジベンゾフランおよびジベンゾフラン毒性等量で正の相関が見られた。したがって、焼却施設の堆積粉塵中ダイオキシン類濃度を測定し、曝露指標を算出すれば、職員の血中ダイオキシン類濃度測定を含む健康調査を実施することが必要か、否かの判断がある程度可能と言える。ただし、大規模な改造工事などにより、堆積粉塵の質が変化した場合には、このような方法は誤った方針を示すことになる。
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