研究概要 |
ミトコンドリアはエネルギー産生や呼吸代謝に関する重要な機能を有する小器官である。ミトコンドリアDNA(mtDNA)の遺伝的多型や老化に伴う後天的変異は病態にも深く関連している。しかし、複数のコード領域における大規模な集団調査に適する分析法は確立されていない。今回、multiplex APLP法による同時に多数のmtDNAのSNPsを検出する簡便で迅速な方法を確立した。 最初に日本人のmtDNA全塩基配列分析結果に基づき、塩基置換の頻度が比較的高いコード領域の5ヶ所のSNPs(nt3010、nt4386,nt5178,nt8794,nt10398)と9bpの繰り返し部位(nt8272-8289)の6ヶ所を選択した。Multiplex APLP法では、17種類のプライマーミックスを用いて6ヶ所の置換を同時にPCR増幅し、スラブゲル電気泳動後、SYBR-Gold染色により型判定した。このように6つのプライマーセットを混合することにより、同時に75-151bpのPCR産物が得られ、それぞれの塩基置換を正確に判定することができた。B1とC1は用いた全ての集団から検出されたが、A1,A2,B2,B3,C2,C4はアジア集団からのみ検出された。特にB2はすべての日本人集団からかなり高頻度に検出された。なおB5とC5はほぼドイツに特有のハプロタイプであった。Multiplex APLPは条件設定にやや時間を要するが,一度至摘条件が決まると再現性は高い。また高価な機器や試薬を必要とせず、迅速に型判定できることからmtDNAハプロタイプの判定に最も適する方法と考えられた。
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