ABO式血液型遺伝子の上流域の解析から以下の1)〜5)が明らかとなった。1)転写開始点の上流2kb〜0.9kbにAlu、LINE領域があり、それらの領域はメチル化されている。2)転写開始点の上流0.7kbに新たな転写開始点を同定したが、その周囲には細胞特異的な活性を示すプロモーターが存在する。3)新たに同定された転写開始点はCpG islandの上流側の辺縁にあたり、そこから下流約1.3kbの範囲がCpG islandになっている。4)以前に同定された転写開始点の周囲には細胞非特異的なプロモーターが存在する。5)癌細胞ではABO式血液型遺伝子の上流域のDNAメチル化はAlu、LINE領域から拡大して、下流の転写開始点に及ぶことがあった。 ヒト造血前駆細胞の分化・成熟システムを用いて細胞分化に伴うABO遺伝子の発現について検討したところ、末梢血から分離されたAC133陰性CD34陽性細胞ではABO遺伝子は発現していなかったが、培養7日目では発現し、14日目では発現が抑制されていた。即ち、ABO遺伝子は細胞分化に伴い発現し、その後抑制されることが分かる。しかしながら、転写抑制はDNAメチル化に基づくものではない。下流側のプロモーターは細胞非特異的であり、上流側のプロモーターは細胞特異的であることから、上流側のプロモーターがクロマチン構造に影響を与え、下流側のプロモーター活性に影響を及ぼし、血液型合成酵素の産生に関わるということが考えられる。
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