末梢血からCD34抗原陽性AC133抗原陰性細胞を分離し、thrombopietin、flt3 ligand、stem cell factorの存在下で無血清培地中で7日間培養し、thrombopietin、flt3 ligand、erythropoietinの組み合わせにサイトカインを変更し、赤血球系細胞に成熟分化させるシステムを用いて、血液型遺伝子を発現を調べた。培養前には血液型遺伝子の発現はないが、培養1週後には発現があり、培養2週後では発現は減少していた。以上から、血液型遺伝子は細胞分化段階特異的に発現することが判った。 また、培養14日目の細胞からRNAを調整し5'-RACE法を用いて新たな転写開始点をエクソン1の上流約0.7kbに同定した。エクソン1とエクソン1aはともに赤血球系細胞と上皮系細胞の両方において転写開始のエクソンとなっており、エクソン1aから始まる転写産物よりエクソン1を含む転写産物の方が約20倍多く存在することが明らかとなった。さらに、エクソン1の転写開始点の周囲のプロモーターは細胞非依存的に働くが、エクソン1aの転写開始点の周囲のプロモーターは細胞特異的に機能を示した。また、DNAメチル化の状況を調べると、細胞特異的に働くプロモーターの上流のAlu領域やLINE領域はDNAメチル化を受けていることが明らかとなった。 以上の上流域の解析から、エクソン1の直上流に細胞非特異的なプロモーター、その直上流に転写抑制領域があり、この転写抑制領域の0.4kb上流に別の転写開始点と細胞特異的なプロモーターがあり、その上流はDNAメチル化を受けていることが明らかとなった。
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