研究概要 |
最近の研究で,我々は世界に先駆けて,低温オーブントラッピングキャピラリーガスクロマトグラフィー(Crogenic oven trapping:COT)という新しく,精度の高い高感度分析法を開発してきた。それを化学物質の揮発性を利用した簡便なヘッドスペース(HS)抽出法と組みあわせたHS-COTを用いて,血液や尿などのヒト試料中のクロロホルムを始め,トリクロロエチレン,シンナー成分,シアン,キシレン,エタノール,酢酸エチルなどの主要な揮発性有機化合物の高感度検出法の詳細を確立し,専門雑誌へ発表してきた。 今回の研究は,その延長線上にあるものである。まず,法医学のみならず,環境化学の分野でも問題となっているスチレンとその関連化合物であるトルエン,エチルベンゼン,イソプロピルベンゼン,n-プロピルベンゼンなどについて,HS-COTを用いて高感度分析を行った。その結果,ヒト試料である血液・尿のいずれのサンプルについても非常に良好な結果が得られた。さらにクロロホルムにて麻酔を施したラットから得た全血につき,本法で実際に定量を行う事ができた。以上の結果をまとめ,国際雑誌へ発表した。 続いて,一般的な局所麻酔薬であるセボフルラン,イソフルラン,エンフルランやハロタンに加え,化学実験でもよく使用される有害性の高い揮発性溶媒であるヘキサン,シクロヘキサンについても同様にヒト全血からHSにて抽出し,COTで高感度分析を行ったところ,良好な結果を得て国際専門誌へ発表した。 そして,上記の一連の重要な薬毒物分析の全結果をまとめて考察し,総説として国際雑誌へ発表した。
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