研究概要 |
国際化に伴って増加している日本国内に居住する外国人の犯罪や事故への関与、あるいは、周辺海域における船舶事故や遺棄によって発生する遺体やその一部に対する個人識別が重要となってきており、われわれは、日本人と外国人の異同識別のための新しいマーカーの検索を行なっている。本年度は男性特有のY染色体上の二対立遺伝子多型(SNPs)からなるハプログループの分布を調査した。DNAは日本人(鳥取,沖縄)、韓国人(ソウル),漢民族(西安,長沙,福州,恵州),ハルハ族(モンゴル),ドイツ人(ミュンヘン)の9集団785人から得た。DNA多型はUnderhill et al.(2001)のプライマーデータベースを一部改変して,主に,RFLPによって解析した。YAP(M1),RPS4Y(M130),M9などの東アジアの集団に特徴的な29多型を調査したところ,24種類のハプログループに分類された。東アジアの集団は上記3種の多型から派生したD,C,O系統が大多数を占めた。鳥取ではそれぞれ25.6,21.4,52.1%であり、沖縄では特にD系統が高かった。韓国人ではD系統は少なく、O系統のSRY465やDXYS5Yが日本人と共通して高かった。一方、漢民族ではO系統が圧倒的に優勢で,ハルハ族ではC系統が50%以上を示した。ハプログループ頻度を基にCavalli-Sforzaの遺伝距離(Dc)を算出し、近隣結合(NJ)法で得られた系統樹は,日本人・韓国人,中国4集団,ハルハ族がそれぞれ異なるクラスターを形成した。日本人で高頻度に出現するD系統のうち、M125陽性グループなどが実務に応用可能であった。
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