研究分担者 |
亀崎 豊実 自治医科大学, 医学部, 講師 (90316513)
岩本 禎彦 自治医科大学, 医学部, 助教授 (10232711)
梶井 英治 自治医科大学, 医学部, 教授 (40204391)
近江 俊徳 自治医科大学, 医学部, 助手 (40296091)
熊田 真樹 自治医科大学, 医学部, 助手 (40326830)
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研究概要 |
1939年、LevineとStetsonによって発見されたRh血液型システムは、RHCE,RHDの互いによく似た2つの遺伝子(ともに10個のエクソンで構成)によって支配され、複雑な抗原系を形成しているだけでなく,数多くの変異型を有することを特徴としている。我々は、RHCE遺伝子およびRHD遺伝子の大きさがそれぞれ57831bp,57295bpとなることを明らかにするとともに、両RH遺伝子間の塩基配列を比較・検討し、マイクロサテライト多型、Alu配列に代表される分散型繰り返し配列、塩基置換、nucleotide gaps(欠失と挿入を含む)(以下、gapsと略す)、組換え領域などの分布状況のデータを得ていた。これらの知見を基に、partial D,Rhmod,weak DなどのRh変異型の分子遺伝学的背景を具体的に明らかにした。これらRh変異型の分子遣伝学的データを基にして、Rh抗原(ポリペプチド)の発現メカニズムについての考察をおこない、輸血医学に貢献することができた。 ヒトRH遺伝子のマウスにおけるオーソログであるRhced遺伝子を含むゲノム領域の塩基配列を決定し、ヒトの相同領域と比較・検討し、RH遺伝子の分子進化について新たな知見を得た。これらの結果からRH遺伝子を含むヒトの第一番染色体短腕の領域と、マウスのRhced遺伝子を含む第4番染色体の領域はシンテニーが強く保存されていることを明らかにすることができた。Rhced遣伝子においてもヒトRH遺伝子と同様に種々多様なマイクロサテライト多型が同定された。 複雑な特徴を示すRh式血液型システムがいかに構成され進化してきたのかを解明するためにバイオインフォマティクスの手法を用いて、ヒトRH遺伝子の分子進化についての考察を行った。RH遺伝子は、塩基置換とgapsに加え、組換えによって多様な構造を獲得することが明らかになった。さらに、RH遺伝子においては、祖先遺伝子からの進化の過程で祖先遣伝子の機能とは異る新しい機能を得ている可能性が示唆された。 現在、4種類のRHCE遺伝子(RHce,RHcE,RHCe,RHCE遺伝子)などのそれぞれの塩基配列の相違点について解析をおこない、両RH遺伝子間の一塩基多型(single nucleotide polymorphisms : SNPs)の同定を進めている。 以上の知見を基にして、新しいRh genotyping法の開発を予定している。
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