研究概要 |
1.ヒト組織におけるH type1、H type2、H type3/4の組織内分布を免疫組織化学的に調べた。肺では分泌型の気管支腺の粘液細胞はH type1抗体に強く染色され、気管支粘膜表面の先端はH type1、H type3/4抗体に強く染色されたが、非分泌型でばいずれも染色されなかった。気管支上皮の基底細胞は分泌型非分泌型にかかわらずH type2抗体で染色された。腎臓の遠位曲尿細管は分泌非分泌型共にH type2、H type3/4抗体で染色され、集合管では主に分泌型がH type1抗体で染色され、非分泌型ではあまり染色されなかった。また、H type3/4抗体では分泌型のみが染色された。 2.ノザンブロシト解析手法、及びin situハイブリダイゼーション手法を用い、α1,2フコース転移酵素遺伝子(FUT1及びFUT2)の発現をmRNAのレベルで解析した。対象とした上皮腺癌由来細胞株(MCAS、PC-3、CCK-81、CoCM-1、・WiDr及びSW837)と扁平上皮癌由来細胞株(HeLa及びHEp-2)のうち、ヒト癌由来細胞株の全てでFUT1が、HeLa、HEp-2及びPC-3以外の細胞でFUT2の発現が見られた。結果より、上皮腺癌由来細胞ではFUT1、FUT2の両方、扁平上皮癌由来細胞ではFUT1mRNAのみが発現する傾向が見られた。また、横行結腸から直腸にかけての上皮腺癌由来細胞株(上記のCCK-81からSW837)ではFUT1mRNAの発現量が直線的に増加していた。FUT mRNA発現と、過去に報告されている癌組織でのフコース転移酵素発現の有無には相関性がみられ、癌組織でのフコース転移酵素の発現異常はmRNAのレベルで調節されていると考えられた。
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