研究概要 |
除草剤パラコート(PQ)は酸化還元サイクルによって体内で容易にsuperoxideを産生することが知られている。われわれは,特異的障害臓器である肺に注目し,PQ投与後初期の段階で影響をうける遺伝子を検出することを試みた。すなわちPQ20mg/kgをラットに投与し,投与後3hrで肺からRNAを抽出し遺伝子発現レベルの違いをdifferential displayで検討した。投与後3hrでdifferential displayによって発現の差がみられる17個のクローンを選択して抽出し,サブクローニングして19クローンの塩基配列を調べてNCBI BLASTを利用してホモロジーを検索した。19クローンのうち10クローンは既知のmRNA(マウス,ラット)とホモロジーを認めたが,5クローンはマウス染色体DNAとホモロジーを示し,他の4クローンはUnknownであった。既知のmRNAとホモロジーをもつ10クローンの塩基配列から10組のprimerを合成し、従来のRT-PCR法で3hにおける肺での発現の違いを比較検討した。その結果,有意な差を示すクローンは次の6遺伝子であった。mouse phospholipid transfer protein, mouse tight junction protein 1,ratCL1BA, rat alpha-II spectrin, mouseKIAA0391,mouse dynein。またそれぞれの遺伝子について,24hrでのPQによる影響は低下した。上のうち,RT-PCRで有意差の最も大きかったphospholipid transfer proteinとKIAA0391について,SYBR GreenによるReal-time PCRによって発現の違いを確認した結果,Real-time PCRでもRT-PCRと同様な結果を得ることができた。以上,これらの遺伝子群がパラコートの肺障害の極初期に関与する可能性が示唆された。今後これら遺伝子の発現局在を調べるとともに,ラットDNA arrayによる検討を継続して行う予定である。
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