研究概要 |
血栓症や反復性流産例で検出される抗血管内皮5単糖(VPS)抗体は血管内皮細胞表面の糖領におけるアンチトロンビンIII(ATIII)結合部位を認識する自己抗体である。血栓症形成における抗VPS抗体の役割を知るために以下の検索を行った。 1.マウスモノクロナル抗VPS抗体(H16)産生ハイブリドーマ及びEBウイルスでトランスフォームしたヒトモノクロナル抗VPS抗体産生クロンを得た。これらのモノクロナル抗体はVPSと血管内皮細胞に特異的に結合し、DNA, B_2-GPI,リン脂質、他の細胞株とは反応しなかった。 2.妊娠マウスにH16を静脈投与したところ、流産等の臨床症状を惹起することはできなかった。しかし、血中TAT値の著増と投与マウスでの各組織での血管内皮細胞への抗体沈着を認めた。 3.血管内皮細胞への抗VPS抗体の関与様式を追求した。ヒト膀帯血由来内皮細胞HUVECをH16と混合したところ、HUVEC細胞表面におけるCD62pの表現が増強し、又、HUVECとT細胞の結合を増強した。 以上より、抗VPS抗体は血管内皮細胞と結合し、その機能に変化を与えることが判明した。
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