研究概要 |
肥満細胞はIgE Fcレセプター(FcεRI)を有し,FcεRIに結合したIgEが多価抗原と結合することによって,FcεRIが凝集し,即時型アレルギー反応が惹起される.この際,組織に固着した肥満細胞表面のIgEと拡散で広がった抗原とが偶然出会い,結合するかのように理解されてきた.私達は細胞表面に抗原特異的IgEを有する感作肥満細胞は至適抗原濃度の部位へ向かって遊走する性質があるという結果を得た.マウス肥満細胞株MC/9を用いた検討では肥満細胞をFcεRIを介して抗原刺激した細胞上清には遊走活性はない.肥満細胞がFcεRIを介して刺激されると各種Small GTP結合蛋白の活性化とその標的蛋白の活性化が起きる.Rhoの標的蛋白であるRho-kinaseの阻害薬Y-27632は肥満細胞の遊走を抑制する.また,肥満細胞は抗原刺激を受けるとMAP kinase familyに属するERK,p38 MAP kinase,JNKのいずれもが活性化されるが,ERK活性化経路を抑制するMEK1阻害薬PD98059は肥満細胞の遊走を抑制しない.一方,p38 MAP kinase阻害薬SB203580は肥満細胞の抗原へ向かう遊走を有意に抑制する.PI3-kinase阻害薬WortmanninはFcεRIを介するp38 MAP kinase活性化を部分的ではあるが抑制し,JNKの活性化をほぼ完全に抑制するが,肥満細胞の遊走を抑制しない.WortmaninnとSB203580の遊走抑制効果の相違を検討するために,p38 MAP kinaseの活性化に続くMAPKAP kinase 2の活性化を測定すると,SB203580はMAPKAP kinase 2の活性化をほぼ完全に抑制するが,Wortmanninは部分的に抑制するのみであり,遊走を抑制するためにはMAPKAP kinase 2の活性化を完全に遮断する必要があると思われる.
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