我々は従来、IgE自体によるマスト細胞や好塩基球の表面FιεRI発現増加誘導の結果として、IgE依存性細胞活性化が増強することを報告し、この機構がI型アレルギー疾患の病態において増悪・遷延化に関与することを論じてきた。本研究では、IgE依存性のマスト細胞・好塩基球の反応が、実際には複雑なシステムであるとの仮説の下でIgE-FιεRI依存性反応の抑制性調節及びその関連の解析を行い、下記の結果を得た。 1.細胞表面IgE量は、30〜50%の変化であっても細胞機能に有意な影響を与えることを明らかにした。すなわち、副腎皮質ステロイド剤はin vitroでマウス培養マスト細胞のFιεRI表面量を30〜50%減少させるとともに、抗原依存性脱顆粒を減弱させた。 2.IgE-FιεRI依存性の活性化抑制機構である脱感作の至適誘導条件を、ヒト末梢血好塩基球を用いて決定するとともに、IgE表面量の増加した好塩基球においては活性化のみならず脱感作も増強していることを見出した。さらに、このような好塩基球脱感作は刺激閾値以下の慢性刺激により誘導することができ、誘導後は強力なIgE依存性刺激に対して完全に無反応に持ち込むことが可能であった。 3.ヒト好酸球においても、マスト細胞同様に、IL-4とIgEが微量のFιεRI表出に関与し、持続的な発現を誘導することを見出した。 以上の結果から、マスト細胞・好塩基球などのFιεRI発現細胞のIgE-FιεRI依存性反応は、活性化という一面にとどまらず、外的因子から様々な調節を受けるとともに、しかも自身が抑制機能をも包含するという複雑なシステムであることが明らかとなった。本研究の成果は、IgE依存性アレルギー疾患の治療戦略において、IgE-FιεRI依存性細胞活性化を抑制する新たなアプローチにつながりうる点で、有意義なものと考えられる。
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