多発性筋炎(PM)は、細胞傷害性CD8T細胞(CD8CTL)が筋線維を傷害することにより発症する自己免疫疾患とされ、殊に筋線維間(内鞘)に浸潤するCTLが筋傷害に直接関わるとされている。これまでに、我々は、TCRBCDR3スペクトラタイピング法により、PM患者では、健常人と比べて、末梢でクローン性に増多するCD8T細胞が多く、その部は筋組織内に存在することを示してきた。今回はこれら末梢で増多するクローンの一部が、実際に筋線維を傷害しうる内鞘浸潤細胞であるかどうかをマイクロダイセクション法を用いて検討し、かつsingle cell RT-PCR法により、TCRA、B両鎖を同定し、パーフォリン分子の発現を確認することを試みた。方法は、末梢血で7クローンのCD8T細胞増多が認められたPM患者の筋組織切片から内鞘に浸潤する単核球細胞をマイクロダイセクション法にて切り出し、DNAを抽出後、末梢で増多していたクローンのTCRBクロノタイプに特異的なPCRを行った。得られたPCR産物の塩基長をTCRBCDR3スペクトラタイピング法と同じフラグメント解析にて確認し、内鞘局在T細胞のクロノタイプを決定した。 さらに、患者末梢血からこのCD8T細胞と同じTCRBクロノタイプをもつT細胞個々をフロサイトメトリ法により単離し、抽出したRNAからRT-PCR法でT細胞機能分子の発現を検討した。 その結果、内鞘では7クローン中3つが検出され、うち1つが7割を占めた。smglecellRT-PCR法により、用いられていたTCRA鎖も決定することができた。また、この細胞がパーフォリン分子を発現していることも確認できた。以上より、このPM患者の筋の内鞘には、末梢で増多するクローンの1つが優位に浸潤し、このクローンは筋傷害性CD8 CTLと考えられる。この細胞をクローン化することで、PMの病態を形成する自己抗原決定への道が拓けるものと考えられる。
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