多発筋炎(PM)責任自己抗原を同定し、抗原特異的治療法の開発を目指すため、(1)Reverse-geneticsアプローチ:多発筋炎患者の病態形成性T細胞を分離し、このT細胞が認識する筋抗原を同定するために筋cDNAライブフリを発現させる患者由来抗原提示細胞を樹立する。(2)Candidateを予め定めるアプローチ:ラットに多発筋炎に類似した自己免疫性筋炎を惹起する筋構成タンパクC-proteinに着目。組換えヒトC-proteinを作成し、この抗原に対する患者リンパ球および血清の反応性を検討する、の2法を行った。PMの一患者の末梢リンパ球はH.saimiriで不死化した。リンパ球刺激にIL-15を用いることにより、末梢でクローン性に増多していたT細胞を維持することができた。マイクロダイセクション法によれば、このT細胞は生検筋組織内でパーフォンを発現する主要な細胞であった。患者由来抗原提示細胞としては末梢B細胞を選びこれをEBウイルスで不死化した(EBV-BLCL)。遺伝子導入の困難なEBV-BLCLにcDNAライブラリを導入する準備として、この細胞株にレトロウイルスのエコトロピック受容体遺伝子を導入したところ、エコトロピックウイルスによる遺伝子導入に高感受性の細胞株となった。C-proteinについては、組換えタンパクをオーバーラップする4断片として大腸菌で発現して精製した。精製蛋白を患者リンパ球と共培養したが増殖反応が観察されたものはなかった。また、4断片をSDS-PAGEで展開し、患者血清でウエスタンブロットしたところ健常者血清と比べて反応性に差は認められなかった。PMにおいてC-proteinが責任自己抗原である可能性は低いと思われ、cDNAライブラリを用いるアプロチが有効であると考えられた。
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