自己免疫疾患の発症機序として自己反応性Tリンパ球の関与が考えられている。自己反応性Tリンパ球は通常胸腺あるいは末梢においてT細胞受容体(TCR)からのシグナルにより負の選択を受けアポトーシスを起こして除去されるが、なんらかの理由によりそのシステムが有効に働かなかった場合、自己反応性Tリンパ球が末梢に出現すると考えられる。本研究は、TCRからの刺激により胸腺細胞、あるいは末梢Tリンパ球に誘導されるアポトーシスシグナル伝達経路を明らかにし、自己反応性Tリンパ球を介した自己免疫疾患の発症機序を明らかにする目的で進められた。我々は、まず、末梢Tリンパ球のTCRを介したアポトーシス誘導シグナルを解析した。我々は、TCRからのシグナルによりp38マップキナーゼが活性化され、Baxのミトコンドリア膜への移行が誘導されることにより、ミトコンドリアを介したアポトーシスが誘導されることを初めて明らかにした。次に、我々は、TCRを介した胸腺内未熟Tリンパ球(胸腺細胞)のアポトーシス誘導におけるカスパーゼ活性化DNase(CAD)の活生化経路の解析を行った。これまで、CADおよびその阻害蛋白であるICADは細胞質および核に存在することが示されていたが、我々は、未刺激の胸腺細胞においてCADおよびICADがミクロソーム分画に存在すること、TCRからのシグナルにより細胞質だけでなくミクロソーム分画のICADが分解され、その結果CADが活性化されること、また、ミクロソーム分画の不活性型のCADがカスパーゼ処理により活性化され細胞質分画に移行することを示した。以上の結果は新規CAD活性化経路の存在を示唆するものである。以上の結果を基に、我々は、自己免疫疾患患者のTリンパ球におけるTCRを介したアポトーシス誘導シグナル伝達経路における異常の有無を解析しつつある。
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