自己免疫疾患の発症機序として自己反応性Tリンパ球の関与が考えられている。本研究は、TCRからの刺激により胸腺細胞に誘導されるアポトーシスシグナル伝達経路を明らかにし、自己反応性Tリンパ球を介した自己免疫疾患の発症機序を明らかにする目的で進められた。平成13年度、我々は、胸腺細胞のTCRを介したアポトーシス誘導シグナルに関して解析を行い、TCRによる刺激によりミトコンドリアの膜電位が変化すること、膜電位の変化に伴い、ミトコンドリアからチトクロームCが放出されることにより、アポトーシスが誘導されることを示した。さらに、これらの変化に先んじてBAXの細胞質からミトコンドリアへの移動が起こること、さらにp38キナーゼの阻害剤がこれら一連の反応を阻害することを示し、TCRシグナルによりp38が活性化されることが胸腺細胞のミトコンドリアを介したアポトーシス誘導に重要な役割を果たすことを示した。平成14年度、TCRを介した胸腺細胞のアポトーシス誘導におけるカスパーゼ活性化DNase (CAD)の活性化経路の解析を行った。これまで、CADおよびその阻害蛋白であるICADは細胞質および核に存在することが示されていたが、我々は、未刺激の胸腺細胞においてCADおよびICADがミクロソーム分画に存在することを初めて明らかにした。さらに、TCRからのシグナルにより細胞質だけでなくミクロソーム分画のICADが分解され、その結果ミクロソーム分画の不活性型CADが活性化され細胞質分画に移行することを示し、ミクロソーム分画のCADのアポトーシスへの関与を示唆した。これらの結果は新規CAD活性化経路の存在を示唆するものであり、以上の結果をもとに、我々は、自己免疫疾患患者のTリンパ球におけるTCRを介したアポトーシス誘導シグナル伝達経路における異常の有無を解析しつつある。
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