研究概要 |
転写因子NFIL-6を制御することが慢性関節リウマチ(RA)の治療につながるかどうかを検討するために,転写因子NFIL-6の結合部位を遺伝子の上流にもつ,IL-6,IL-8,PGE_2,COX2などのRAの病態形成に密接に関わっていると考えられている分子の発現がNFIL-6の阻害により抑制されるかどうか,RA患者由来の関節滑膜細胞を用いてin vitroで検討した.転写因子NFIL-6の阻害は,転写因子NFIL-6の結合部位と同じ塩基配列をもつ二重鎖20オリゴヌクレオチドをデコイとしてリポゾーム法(HVJ-リポゾーム)に、より滑膜細胞にトランスフェクションして行った.各分子のmRNAの発現は,GAPDHをインターナルコントロールとした半定量RT-PCR法を用いて検討した.デコイのコントロールとして,ミスマッチ20オリゴヌクレオチド,オリゴヌクレオチドの入っていない空ベクターを用いた.HVJ-リポゾームをベクターとして,デコイ,ミスマッチオリゴヌクレオチドを滑膜細胞に導入した.蛍光顕微鏡でGFPの発現を検討し,導入率(70〜80%)を確認後,IL-1β存在下で12時間培養後,mRNAを回収,RT-PCR法を用いて,各分子の発現を検討した.その結果,IL-6,IL-8,PGE_2の発現は,3群において有意な差を認めなかったが,COX2の発現は,デコイ導入滑膜細胞では,空ベクター,ミスマッチオリゴヌクレオチド導入細胞に比べて,約30%の低下を認めた.以上の結果から,滑膜細胞でのCOX2の発現は転写因子NFIL-6依存的であり,転写因子NFIL-6の阻害により,RAの滑膜細胞に抗炎症性作用が誘導されるごとが示唆された。
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