前年度、転写因子NF-IL6の対するデコイ(NF-IL6のDNA結合部位と同じ塩基配列をもつ二重鎖20オリゴヌクレオチド)が、関節リウマチ(RA)患者由来の滑膜細胞のin vitroでのCOX2発現を有意に(約30%)抑制することを報告した。今年度は、実際にin vivoで、NF-IL6のシグナルのブロックが関節炎を抑制することができるかどうか検討するために、NF-IL6(C/EBPβ)欠損(NF-IL6-/-)マウスとワイルド(NF-IL6+/+)マウス、各々18匹にIL-6依存性の実験的関節炎であるAIA(antigen-induced arthritis)を誘導し、病理組織学的に関節炎の重症度(スコア0-4)を比較した。その結果、ワイルドマウスでは、スコア4;3匹、スコア3;8匹、スコア2;7匹でスコア1、0は0匹ですべてのマウスにおいて有意な関節炎(スコア2以上)が誘導された(平均スコア2.78±0.73)。一方、NF-IL6欠損マウスでは、スコア4;1匹、スコア3;4匹、スコア2;8匹、スコア1;3匹、スコア0;2匹と有意な関節炎を発症しなかったマウス(スコア1以下)が18匹中5匹いた。また、平均関節炎スコアも1.94±1.06と有意(P<0.05)に低下していた。以上のことから、NF-IL6のシグナルをブロックすることで関節炎が緩和されることが示された。この結果は、RAにおいて、転写因子NF-IL6を標的とした新規の治療法の可能性を示唆するものと考えられる。
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