気管支喘息の病態においてαβT細胞および好酸球が中心的な役割を担っていると考えられているが、これまで肺、腸管など外界との接触の多い上皮内に多数存在するγδT細胞がどのように喘息の発症及び重症・難治化の機序に関与しているか、また免疫制御・炎症反応に関わる強力なサイトカインであるTNF-αの喘息病態における意義は全く明らかにされていなかった。申請者のグループはTNF-α deficient及びtransgenic miceを用いて喘息モデルを作製後、anti-TCR-δモノクローナル抗体投与前後における気道炎症及び気道過敏性の変化を検討し、TNF-α transgenic miceの肺組織中にはwild typeに比べ10倍以上のγδT細胞が存在し、TNF-αが気道過敏性を有意にdown-regulateしていることを世界ではじめて明らかにした。またTNF-αの機能的に異なった二つの受容体(TNFRp55、p75)の役割についても不詳であったが、我々はTNFRp55^<-/->及びp75^<-/->miceを使用して喘息モデルを作製し、抗原誘発による気道炎症及び気道過敏性獲得におけるTNFRの重要性について検討した。その結果TNF-αはp75 receptor pathwayを介してγδT細胞を活性化し、気道過敏性を抑制的に制御していることが明らかとなった。一方喘息においてどのγδTCR T細胞サブセットが気道炎症及び気道過敏性をコントロールしているかを明らかにする目的で、マウス喘息モデルに主要γδT細胞サブセットに対するモノクローナル抗体を投与し、またTCR Vγ4/6^<-/-> mice、MHC classI^<-/-> miceなどによる喘息モデルの検討より、Vγ4T細胞がMHC classI依存性に気道過敏性を抑制的に制御する可能性を報告した。また、申請者のグループは慢性喘息(リモデリング)モデルとして長期間抗原暴露を繰り返した場合に、気道炎症及び気道過敏性が減弱することが知られているが、この機序の1つとしてγδT細胞、Vγ4T細胞が重要な役割を果たしている可能性を報告した。さらに、このγδT細胞、Vγ4T細胞は、気道局所へのネブライザー投与においても同様に気道過敏性抑制効果が認められた。以上、今回の研究により、喘息病態におけるγδT細胞の役割が解明され、さらに今後の新規喘息治療薬開発における重要な研究結果が得られた。
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