研究概要 |
(目的)原発不明低分化腺癌患者腹水より、ヌードマウスに造腫瘍性を有する細胞株(TAKA-1)を樹立した。TAKA-1細胞はin vitroでは付着せずに浮遊した状態で増殖するが、5-AZA-2,-DEOXY-CYTIDINEの添加により上皮様形態に変化した後、徐々に増殖を停止し最終的には死滅する。一方、付着しなかった浮遊細胞は7日後までにほぼ全て死滅する。そこで本研究では、脱メチル化処理前後のTAKA-1細胞のcDNAをMicroarray法及びPCR-subtraction法を用いて比較検討し、脱メチル化により発現が誘導される細胞接着・運動・細胞周期・分化などに関連した遺伝子を同定する事を目的とする。 (結論)1、TAKA-1細胞は脱メチル化により上皮様形態の付着細胞に変化し、運動能も亢進した。2、脱メチル化により誘導される上皮様の付着細胞は、G1/S arrestを生じた後、徐々にアポトーシスで死滅した。3、脱メチル化によりCDK inhibitorであるP161NK4a, CIP1/WAF1の発現増加やG1/S-specific cyclin, PCNAなどの発現低下を認め、これらの遺伝子発現の変化がG1/S arrestに関与していることが推定された。中でも、INK4aは脱メチル化処理前には発現しておらず、TAKA-1細胞の重要な分子標的となる可能性が示唆された。4、脱メチル化によるTAKA-1細胞の付着・運動能の活性化に関しては、integrin alpha3, motility related protein(CD9), P21 activated kinase, small GTPase(rhoC), rho/racGEF, ephrin/ephrin receptorなどの発現増加との関連が示唆された。
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