研究概要 |
Candida albicansにおいて、delta-5,6-desaturaseの欠損が抗真菌薬感受性に及ぼす影響について検討した。delta-5,6-desaturaseは、細胞膜の主成分であるエルゴステロールの生合成経路に関与しており、ERG3遺伝子によってコードされている。ERG3の中心部をhisG-URA3-hisG cassette^<1)>で置き換えたdisrupti on constructを作製し、アゾール系抗真菌薬(以下アゾール)に感受性を示すC.albicans CAI4株^<1)>に対して相同組換えによる遺伝子破壊を行った。C.albicansはdiploidであるため、各々1つのalleleのみを破壊したCAD1株とCAD2株、さらに両方のalleleを破壊したCAE3D株を作製した。いずれもin vitroでの発育速度は親株CAI4と同等であった。また、CAD1株とCAD2株のアゾール感受性は変化しなかったが、完全なerg3欠損株であるCAE3D株では、フルコナゾールのMICが>1024μg/mlと極めて高度な耐性が誘導され、イトラコナゾールとミコナゾールにも同様の耐性を示した。さらに、CAE3D株に対して野生型のERG3を再導入するcomplementation studyにてアゾール感受性の回復を確認した。アムホテリシンBとフルシトシンに対してはいずれも親株と同等の結果であった。以上より、C.albicansにおいてdelta-5,6-desaturase(ERG3)の変異はアゾール高度耐性を誘導する原因の一つと考えられた。
|