研究概要 |
我々は昨年までにヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus type1:HIV-1)のclaid-Bウイルスのおよそ60%を中和できるモノクローナル抗体RC25を用いてイムノアフィニティーカラムを作製し、12-merからなるペプチドをもつM13系のファージベクターライブラリー(PhD-12,NEB)を繰り返し、反応させて抽出、精製することにより、もともと2x10^9通りのライブラリー(ER2738株に対する感染力価は約10^<13>)から反応エピトープを持つファージを108サンプルまで絞り込むことが出来た。本年度はRC25と交叉反応を示さないgp120-V3に対する中和抗体0.5βとRIE324-12の反応性をドットブロット法で調べ、交叉反応の強い6種のミモトープ(NSV, APE, APS, SDF, YPW, YPL)を同定し合成ペプチドを作製した。これらをKLHに結合させ、動物に免疫したところ、十分な力価の抗ペプチド抗体の誘導が確認できたが、HIV感染細胞への反応性は弱く、中和活性も検出できなかった。ファージに結合した状態での抗原構造が合成ペプチドでは失われるのではないかと考え、NSVファージそのもので家兎を免疫し、ペプチドカラムで特異抗体を精製し、分析したところ弱いながらも反応性と中和活性が認められた。HIVに対するワクチン開発は世界的規模の重要課題であり、その開発には広範囲のウイルス株を中和する中和抗体の誘導が不可欠である。より良いミモトープワクチンを得るためにはコアのシークエンス以外の部分のアミノ酸を変化させたペプチドライブラリーを作成し検討する必要がある。
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