研究概要 |
我々は昨年までにclaid-Bのヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus type1:HIV-1)の60%を中和できるモノクローナル抗体RC25を用いてファージベクターライブラリー(PhD-12,NEB)をスクリーニングし、反応エピトープを持つファージを絞り込んだ。さらに、RC25と交叉反応を示さない中和抗体0.5βとRIE324-12の反応性をドットブロット法で調べ、交叉反応の強い6種のミモトープ(NSV, APE, APS, SDF, YPW, YPL)を同定し合成ペプチドを作製した。これらをKLHに結合させ、動物に免疫したところ、十分な力価の抗ペプチド抗体を認めたが、HIV感染細胞への反応性は弱く、中和活性も検出できなかった。今年度はこれに加え、RIE324-12抗体を用いてファージをスクリーニングしたが、反応クローンは得られなかった。ファージ上での抗原構造が合成ペプチドでは失われるのではないかと考え、NSVファージそのもので家兎を免疫し、ペプチドカラムで特異抗体を精製、分析したところ、弱いながらも反応性と中和活性が認められた。今年度はまた、ファージキャプチャーアッセイの実験系を作り抗原の立体構造を保ったまま交叉反応性を検討した。今年度新たに同定したIGGというRC25反応性ファージにNSV, APEについて検討したが、有意な交叉反応性は認められなかった。これまでの研究では理想的な交叉反応性のペプチド配列を同定できなかったが、立体構造を保った状態での解析のシステムが構築できた。HIVに対するワクチン開発は世界的規模の重要課題であり、その開発には広範囲のウイルス株に対する中和抗体の誘導が不可欠である。未だに世界中の研究者が解決できない難題であり、今後も研究開発を継続する予定である。
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