細菌DNAより見出された非メチル化CpGをコア配列とした塩基配列(CpGモチーフ)は、哺乳動物細胞に対しTh1反応主体の強い免疫刺激作用を示す。Tsk/+マウスはTh2優位な病態を示し、難治性自己免疫疾患である強皮症の良いモデルとなっている。本研究は、Tsk/+マウスにCpGオリゴヌクレオチド(CpG ODN)を投与し、生体内のサイトカイン環境を是正することで、発症の抑制、あるいは病態の改善を目指した。 平成13年度は6週齢のTsk/+マウスに対しCpG ODN投与を開始して、以後3週おきに計6回投与を行い、強皮症発症に対する抑制効果を解析した。しかし、Tsk/+マウスは23週齢で強皮症様症状(皮膚の肥厚、抗核抗体、肺気腫)を呈し、発症の抑制は認められなかった。 平成14年度は生後1週齢のTsk/+マウスに対しCpG ODN投与を開始して、以後3週おきに計7回投与を行い、同様に解析した。その結果、CpG ODN投与マウスでは、対照ODN投与マウス、生理食塩水投与マウスと比較して、最終投与4週後の23週齢で発症の抑制が認められた。すなわち、(1)低い抗核抗体価を示し、(2)背部皮膚の肥厚が認められなかった。さらに、この抑制効果は最終投与13週間後の32週齢でも維持されていた。ところがこのとき、各群のTsk/+マウスはいずれも肺気腫様症状を示した。 以上から、発症抑制のためには若齢からCpG ODN投与を開始すべきであると結論される。この抑制効果は、CpG ODNによりTh1サイトカインのIFN-γ産生細胞が増加したことによると解釈される。また、Tsk/+マウスの肺気腫は、Th1/Th2サイトカインバランスの偏向とは異なるメカニズムにより形成されると考えられる。 本研究により、強皮症の発症抑制を目的とした治療法として、CpG ODNを生体に投与する新たな方法が例示された。
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